犬猫の抗がん剤治療における体温管理の重要性

抗がん剤治療は犬や猫のがん治療において重要な役割を果たします。しかし、抗がん剤治療には副作用も発生し、中でも特に発熱は敗血症や感染症の可能性があるため注意が必要です。
犬猫の体温変化を発見するには日々の体温管理が重要です。体温管理を適切に行い、常に体温を把握することができれば愛犬愛猫の急な体調変化にも気づきやすくなります。

抗がん剤治療中の体温変化のメカニズム

抗がん剤は、がん細胞ではない正常な細胞にも影響を与えることがあります。これにより免疫機能の低下や炎症反応を引き起こす可能性があり、以下のような体温変化が見られることがあります。

・低体温:食欲不振や体力の低下により代謝が低下し、体温が下がる場合があります。
・高体温(発熱):感染症や抗がん剤自体による炎症反応が原因となり、発熱が起こることがあります。

特に発熱は敗血症や他の深刻な感染症の兆候である可能性があるため、迅速な対応が求められます。

体温管理の重要性

抗がん剤治療中の犬猫の体温を把握することのメリットは敗血症・感染症の早期発見だけではありません。
例えば、高熱や低体温が続くと、ペットの体力が著しく低下し、抗がん剤治療を継続できなくなる場合があります。体温を安定させることは、治療計画を順調に進めることに繋がります。
また、適切な体温管理により、ペットが治療中も快適に過ごすことができます。これは、飼い主様にとっても大きな安心感をもたらします。

体温以外にも、日本小動物医療センターでは呼吸数と心拍数の定期的な把握も重要と伝えています。体温・呼吸数・心拍数の3つはTPRと呼ばれ、ペットの健康状態を知るための重要な指標となっています。

体温測定時の注意点

犬猫の体温は、人間と同様に1日の中でも変化します。体温測定はいつ行っても問題ありませんが、測定する時間帯を一定にしておくと平熱の把握ができ、低体温・高体温に気づきやすくなります。
犬猫の平熱は一般的には下記の通りですが、個体差があります。愛犬愛猫の平熱を把握することが重要です。

【犬】小型犬:38.6℃~39.2℃ / 大型犬:37.5℃~38.6℃
【猫】38.0℃〜39.2℃

なお、食後や運動後などは平熱と異なる結果が出やすいため、避けることをおすすめします。また、排便しそうな時も正確な数値が計測できないことがあるので避けてください。

体温は1日1〜2回測定し、40℃を超えていたらすぐに動物病院へ連れていくようにしてください。微熱の場合は、食欲や元気があれば少し様子をみても大丈夫ですが、2〜3時間後にまた熱を測り、熱が上がっているようであれば動物病院を受診しましょう。

自宅での体温測定

犬猫は人間のように脇に体温計を挟む方法では正確な体温測定ができません。犬猫の体温は直腸の温度を測定するため、肛門に体温計を差し込んで測定します。

基本的な体温測定の方法

【用意するもの】
動物用体温計、体温計カバー(ない場合は食品用ラップで代用可)、オリーブオイル

【手順】
1. 付属のカバーや食品用ラップで体温計の先端を覆いましょう。衛生的に使用することができます。
2. カバーをかけた体温計の先にオリーブオイルを少量つけます。これをすることで、挿入の際の滑りが良くなり、違和感を軽減することができます。
3. 犬猫が立っている状態、もしくは伏せている状態でしっぽの根本を優しく握り、ゆっくりと持ち上げます。
4. 少し肛門が開いたら、そっと3〜5cmほど差し込みます。測定終了までその体勢を維持してください。
5. 測定が終わったら、優しく体温計を引き抜いてください。

【体温測定のコツ】
・測定中に座ってしまう場合には、腕をお腹の下に入れて支えてあげましょう。体温を測る人と、体を固定・支える人の2人で行うことが理想です。
・直腸からの体温測定が苦手な犬猫もいます。おやつをあげながら行うなど、できるだけストレスにならないように注意しましょう。

体温測定ツール

体温測定ツールをご紹介します。

Ci 動物用デジタル体温計 MT-G19
上述した方法で、直接直腸から測定するための体温計です。柔らかい素材でできており、肛門や腸を傷つけにくくなっています。
比較的価格も手頃なため、直腸からの体温測定が苦手でない場合は最初の選択肢としておすすめです。

犬の耳温計 ペット赤外線温度計 ペット専用 犬の体温を1秒で測定
耳から体温を測定できる体温計です。こちらはペット用のものですが、人間用のものでも使用可能です。1〜2秒という短時間で測定が終わるのが一番の特徴で、直腸からの体温測定がストレスになってしまう場合におすすめです。

耳で測定する場合は直腸に比べて約1℃低い体温となりますが、継続して測ることで平熱を把握することができます。しかし、体調不良が疑われるときは正確な体温を把握する必要がありますので、動物病院で計測してもらうようにしましょう。

PetVoiceのご紹介

PetVoiceは首輪を装着することで推定直腸温を含む15項目の健康データを測定できるペット用の健康管理デバイスです。提携動物病院とデータを共有することにより、獣医師のサポートで愛犬・愛猫の健康状態をチェックすることができます。
毎日決まった時間に計測することが難しい場合や、体温測定がペットにとってストレスになってしまう場合におすすめです。
体温が37.5~39.5度の間では平均誤差±0.2度で計測が可能で精度が高い点も特徴です。
推定直腸温については、下記のようにグラフで確認することが可能です。

PetVoiceでは、体温だけでなく安静時呼吸数・心拍数も首輪の装着だけで計測することができます。詳しくはこちらをご参照ください。

飼い主様へのアドバイス

体温は愛犬愛猫の体調を知るための大切なバロメーターです。抗がん剤治療中、ご自宅での体温測定で異常がみられる場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
また、体温以外にもペットの行動や食欲の変化をよく観察するようにしましょう。記録もしておくことで、診察の際に役立てることができます。何か不安や疑問がある場合は、獣医師に相談することが大切です。

まとめ

犬猫の抗がん剤治療において、体温管理は異常を速やかに発見するために重要です。かかりつけの獣医師と協力し、適切な管理を行いましょう。そうすることで、ペットがより快適に治療を受けることができ、飼い主様も安心して過ごすことができます。

  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。