猫の高血圧症について

人と同様に血圧が高い猫は多くいます。高血圧は猫にとってどのような悪い影響があるのでしょうか。

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高血圧症とは

高血圧症とは、全身の血圧が異常に上昇している状態です。
具体的には最高血圧(よく人では上の血圧と言われるものです)が160mmHg(mmHg:血圧の単位です)を超えたら高血圧症と言われています。血圧が高くなってもすぐに症状が出るわけではないのですが、血管や臓器に少しずつダメージが蓄積し、やがて大きな合併症の原因となることがあります。

猫の高血圧症の原因

何らかの別の疾患が原因で高血圧症(二次性高血圧症)になる場合がほとんどです。
猫の高血圧症の原因となる疾患は以下のものがあります。

  • 甲状腺機能亢進症
  • 慢性腎臓病
  • アルドステロン症
  • 糖尿病

猫では甲状腺機能亢進症と慢性腎臓病による高血圧が特に多く見られます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は高齢猫に非常に多く認められる病気です。猫は高齢になるほど甲状腺と呼ばれる喉元にあるホルモンを分泌する器官が大きくなりやすい動物で、甲状腺が大きくなると甲状腺から分泌されるホルモンの量も多くなります。甲状腺から分泌されるホルモンは血圧を上昇させる働きがあるため高血圧症の原因となります。

慢性腎臓病

腎臓は体内の余分な水分を尿として排出することで血圧を下げることができる臓器です。慢性腎臓病の場合、この尿の排出が効率よく出来なくなるため、血圧が高くなります。

これらの病気の他にも、副腎や脳の下垂体の腫瘍が原因でアルドステロンと呼ばれる体内の水分量を保つ働きがあるホルモンが分泌されすぎてしまうアルドステロン症や、糖尿病による高血圧症も多くはありませんが報告されています。

また、これらの原因に当てはまらず、血圧が何故か高くなる特発性高血圧症によって高血圧になる猫もいます。

猫の高血圧症が進行すると

高血圧症がすぐに猫にとって悪い影響を与えることは通常ありません。しかし、高血圧状態が長く続くと、血管や臓器にダメージが蓄積されます。この血管や臓器へのダメージは標的臓器障害と呼ばれ、特に眼、脳、腎臓、心臓・血管にダメージが蓄積しやすいと言われています。
これらの臓器にダメージが蓄積すると、以下の病気の原因となります。

  • 緑内障
  • 腎臓病
  • 不整脈
  • 肥大型心筋症
  • 脳出血
  • 脳梗塞

特に目への影響は猫の高血圧症の症状として一番現れやすいものになります。緑内障は眼球内の出血や網膜剥離などが起こり視力が失われてしまう怖い病気です。眼球の底(眼底)の様子を見ることでこの病気が進行しているかわかることも多いため、定期検診で診てもらっておくと安心です。

また猫に多い腎臓病や肥大型心筋症も高血圧が原因になったり、症状を悪化させる原因になったりします。
腎臓病の場合、多飲・多尿が飼い主さんにとって一番最初に気づける症状です。
おしっこの量やお水を飲む量が増えたら腎臓にダメージが蓄積しているのかもしれません。

肥大型心筋症の場合は、心不全症状のような末期に近い段階まで症状が現れないため気づくのは難しいのですが、高血圧症が肥大型心筋症の原因になることは覚えておきましょう。

このほかにも不整脈が原因でふらつきや失神が起きたり、脳出血や脳梗塞が原因でけいれん発作や意識障害などがおこったりします。

猫の高血圧症の治療法と予防法

高血圧に対しての治療は、高血圧の原因になる疾患があればその原因を治療しつつ、血圧を下げる薬を飲むことが主な治療になります。

予防法は高血圧症の原因となる疾患(例えば甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病など)を早期に発見して治療を始めることで、できるだけ高血圧症の発症を遅らせることが重要です。そのため、特にこれらの病気が多くなる高齢猫では定期的に検診に行くことをおすすめします。
人の高血圧症の原因と言われている塩分が多いおやつや食事が猫の高血圧症の原因となるかはあまり分かっていません。しかし塩分の取りすぎが良くないことは確かなので、人の食べ物や塩分量の多いおやつはなるべく与えないほうが良いでしょう。

まとめ

高血圧症は症状が出ていなくても、将来的に臓器などに大きな損傷を与える可能性があります。
高血圧症が発見されたら定期的な検査を必ず行いましょう。
また、適切な治療を早期から行い、できるだけ臓器への負担を減らすことが必要です。

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  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。