猫の安静時呼吸数を測ってみよう

今日からできる猫の健康モニタリング方法の1つに安静時呼吸数というものがあります。安静時呼吸数を測るとどんな事がわかるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

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猫の正常な呼吸数

呼吸数とは1分間の呼吸回数を指します。
健康な猫がリラックスしているときの呼吸数は約20~30 回/分であると言われています。
子猫の場合は1~2割ほど早くなります。また個体差や室温などの要因によっても若干の変動があります。

猫の呼吸の測り方~安静時呼吸数を測ろう〜

猫の安静時(リラックスしているとき、または睡眠時)の呼吸数を安静時呼吸数といいます。
安静時呼吸数の増加は動物の呼吸状態(特に循環器・呼吸器疾患)の悪化に関連していると考えられており、優れたモニタリング項目の1つです。

呼吸数を計測する際は胸の動きで計測する方法とお腹の動きで計測する方法があります。
胸の動きで計測する場合は、猫が息を吸うと胸が膨らみ、息を吐くと胸がへこむのでこの一連の動きを1回の呼吸と数えてください。
お腹の動きで計測する場合は、息を吸うとお腹がへこみ、息を吐くとお腹が膨らむのでこの一連の動きを1回と数えます。

1分間計測することはなかなか大変であるため、1分間計測することが難しい場合は20秒計測してその数値を3倍するか、30秒計測してその数値を2倍することで1分間の計測値としてください。

動物が心不全に陥った際、安静時呼吸数の増加がおこるため、安静時呼吸数は循環器疾患を持つ猫のモニタリング指標として特に優れていると考えられています。最近の研究では、健康な猫であれば呼吸数が1分間に35回を超えることはないという研究結果もあり、安静時呼吸数が40回/分を超えてきたら要注意です。ストレスが加わったり運動後であれば一時的に呼吸数が増えることがありますが、そうでない場合は動物病院への受診を考えてもよいでしょう。
60回/分を超えたら緊急事態です。すぐに処置を行わないと命に関わる呼吸状態です。
入院管理が必要になる場合もあるため、すぐに動物病院を受診してください。

安静時の見極めが難しい・飼い主が猫に近付くと興奮する

安静時以外の呼吸数は、病気以外の理由での増減が考えられます。そのため「安静時」に呼吸数を測定することが重要になります。

一方で、飼い主が近付くと興奮してしまったり、そもそも安静時の見極めが難しいケースがあります。毎日の記録も大変・面倒という方は、安静時呼吸数を自動かつ高精度で測定してくれるPetVoiceの活用を検討してみるのも良いかもしれません。

この後ご紹介する肥大型心筋症の猫で実際に使用された事例もあり、獣医師が信頼しているデバイスです。

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安静時呼吸数が急に増加したときに考えられる原因疾患

急に安静時呼吸数が増加する原因疾患について解説していきます。

肥大型心筋症

猫の循環器疾患では、肥大型心筋症に伴う心不全が主な安静時呼吸数が増加する原因となります。
肥大型心筋症とは、左心室の筋肉が分厚くなってしまい、心臓がうまく拡張できなくなってしまう病気です。その結果、心不全に陥ってしまいます。
心不全が起こると、胸水貯留や肺水腫による呼吸困難によって、呼吸が浅く速くなります。
また、肥大型心筋症によって心臓の動きが悪くなると、心臓内に血栓ができやすくなります。血栓が四肢に向かう動脈に詰まると、詰まった先の足に猛烈な痛みを感じるため、この痛みによっても呼吸が速くなります。
苦しそうに口を開く開口呼吸が認められたり、少しでも肺に酸素を取り込もうと胸を広げるため、前足を大きく開き肩で息をするような犬座姿勢を取ることがあります。

胸水貯留

猫の呼吸数が増加する原因には循環器・呼吸器疾患の中でも、胸の中の空間に水が溜まってしまう所謂胸水貯留が原因となる場合が多いです。胸水貯留の原因としては肥大型心筋症などが原因となる心不全や、低アルブミン血症、膿胸、乳び胸、FIP(猫伝染性腹膜炎)等が挙げられます。

低アルブミン血症

アルブミンは血中に含まれるタンパク質の一つです。このアルブミンは血管内に液体成分を保持する働きがあるのですが、このアルブミンが作られなくなったり、アルブミンが体外に排出されるようになってしまうと低アルブミン血症になってしまいます。これらの原因には肝臓の機能不全や膵炎などが挙げられます。

膿胸

細菌が何らかの原因で胸部の空間に侵入することで膿が混ざったような胸水が溜まることで呼吸困難になってしまう病気です。
原因がよくわかっていない事が多いのですが、外傷や感染性の気管・気管支炎、肺炎、異物による食道が破れてしまうことなどによって起こるのではと考えられています。

乳び胸

リンパ液が流れている胸管という管が何らかの原因によって破れてしまうことで中のリンパ液(乳び)が胸に溜まってしまう病気です。静脈内に血栓ができたり、腫瘍によって胸管が潰される、フィラリア症などによって引き起こされます。

FIP(猫伝染性腹膜炎)

猫の免疫に関わる細胞に感染することで免疫を過剰に反応させ、猫の全身の臓器で炎症を起こす致死性の疾患です。FIPは胸水や腹水が認められるかどうかでウエット型とドライ型に区分されますがウエット型の場合胸水や腹水によって呼吸困難や腹部膨満が認められ、予後は非常に悪いです。

猫喘息

猫は人以外で唯一喘息を発症する動物であると言われています。
花粉やハウスダスト、タバコの副流煙などに体の免疫機構が過剰に働くアレルギー反応によって引き起こされると言われています。主な症状としては呼吸困難や喘鳴(ゼイゼイ、ゼコゼコと言った呼吸音)、呼吸促迫、チアノーゼ等が挙げられます。

猫の呼吸の異常は分かりづらい

猫は体調が悪いとじっとして不調を隠そうとしがちです。呼吸が苦しくても、はぁはぁと口を開けて呼吸するような、わかりやすい呼吸は症状の初期にはあまりしようとしません。
そのため、呼吸の仕方よりも実際の呼吸数を測ってあげることのほうが重要です。猫の呼吸がおかしいというのは緊急事態である事が少なくありません。
呼吸数や、呼吸の仕方が明らかにおかしい場合は、自宅で対処しようとせず、すぐに動物病院を受診しましょう。

まとめ

呼吸は猫の不調を見極める1つの指標です。普段から猫の呼吸数や、呼吸の仕方をよく見てあげましょう。少しでも異常があればすぐに動物病院を受診しましょう。

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  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。