これからの時期に注意!犬の熱中症

人間と同じように、犬も熱中症にかかることがあります。熱中症は、体温上昇とともに脱水、血圧の低下、脳神経を始めとした様々な臓器への機能不全を引き起こす恐ろしい病気です。今回は、犬の熱中症の見分け方や病院に行く前の早期の応急処置など、熱中症から犬を守るための基礎知識を紹介します。

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こんな症状が熱中症のサインかも

犬の体内で産生された熱の70%は体の表面(皮膚や舌の粘膜)から逃げていくと言われています。
しかし犬は皮膚から熱を逃がす事自体は実はあまり得意ではありません。
人の場合体温が上がると汗をかきますよね。人は、この汗が蒸発するときに体の温度が下がるので体温調節を容易に行うことができます。しかし犬の皮膚の表面には汗をかくための汗腺がないため、人と同じ方法で体温調節することが出来ません。
その代わりにパンティングと呼ばれる「ハァハァ」という口呼吸で体温を逃がします。つまり、体温が高くなればそれだけ呼吸が荒くなります。
またできるだけ熱を逃がそうと血管が開くため、舌や目の粘膜が赤く充血します。同時に血圧は低下し、その血圧の低下を補うために心拍数が高くなります。血圧が低下すると、犬はフラフラしたり、ボーっとしたりします。
このような体の反応で熱を逃がそうとするのですが、体にとっては危険な反応なのです。

これらの反応でも体の熱が逃がせなかった場合、熱中症が進行し体の各臓器がダメージを受けて重篤な症状が現れます。
ダメージを受けやすい臓器は特に脳神経、腎臓、消化管、心臓などで最悪の場合死に繋がります。
熱中症が危険なのはただ体温が上がるからではなく、体温が上がった結果、全身で炎症が起こり、その結果多くの臓器が機能不全に陥ってしまうからなのです。犬では熱中症が重篤化した場合、死亡率は50%近いと言われています。

熱中症の初期症状

熱中症の初期には以下の症状が現れます。

  • 呼吸が荒い
  • 心拍数が普段よりはやい
  • 舌や口の中の色が赤い
  • 落ち着きのない様子をみせる
  • よだれが多い
  • 自分で水を飲みに行かない
  • フードを食べない
  • ボーッとしている、フラフラしている
  • 横になって起き上がろうとしない
  • ぐったりしていて、元気がない

これらの症状に加えて

  • 暑い日中にクーラーが効いていない部屋で過ごしていた
  • 一日中外にいた
  • 外でずっと興奮していた
  • 暑い日に車で留守番していた

などの状況があった場合はそれも診断の助けになるため合わせて獣医師に伝えられるといいでしょう。
熱中症は初期の症状のうちに対処することが重要です。
軽度の場合は後ほど紹介する方法を行えば動物病院についたときには回復しているケースもあります。

重篤化した場合の症状

重篤化すると以下の症状が現れます。この症状があれば1分1秒を争う状況です。

  • 嘔吐や下痢
  • 吐いたものや排泄物(尿・便)に血が混じる
  • ぶつけてないのに皮膚にあざができる
  • 尿が出なくなる
  • 体を突っ張るように痙攣する
  • ずっと震えている
  • 歯茎が白くなる・舌や粘膜が青紫になる
  • 意識がなくなる、呼びかけても反応しない

病院に行く前にできることはある?応急処置の例

犬に熱中症と思われる症状が認められた場合は、軽度であってもすぐに動物病院を受診しましょう。動物病院に行く前に次のことをやっておくとより効果的です。
ポイントは「濡らす」「日陰」「風通し」です。

水をかける

とにかく犬をビシャビシャにしてください。
人であれば汗をかいて、その汗が蒸発することで体温が下がるのですが、犬は汗をあまりかかないため、皮膚から熱を逃すことが苦手です。
そのため水をかけて、汗をかいた状況を作り出すことはとても効果的なのです。

水は冷たいものを使う必要はなく、水道水を蛇口からそのままシャワーみたいにかけるだけで十分です。

日陰に移動して風を送る

犬を十分に濡らしたら直射日光の当たらない日陰に移動し風を送り続けてください。自宅であれば扇風機で風を送るのもいいですし、なければうちわで扇ぐだけでも十分効果的です。
風を送ることで体表の水分を蒸発させ、できるだけ早く体が冷えるようにします。

この2つの方法は特に効果的です。

以下の対処法は危険かも?

一方で以下に紹介する方法は、一歩間違えると余計に犬の状態を悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。

氷で冷やす

熱中症なのだから氷や保冷剤で冷やすことは一見良さそうに思えるのですが、実は余計に熱中症を悪化させる可能性があります。
体の正常な反応として、冷たい刺激に対しては体温を下げないように血管を収縮させます。これによって、体温が下がらなくなってしまいます。皮膚の表面や手足の先を走る細い血管は特に収縮しやすいため、注意が必要です。
氷で冷やす場合は脇の下や太もも、首などの太い血管が走っている部位だけを冷やすようにしてください。

水を無理やり飲ませる

人の熱中症でも「熱中症のときは水分補給しなきゃ!!」と考えると思います。
しかし犬の場合、熱中症のときは意識がはっきりしなかったり、重症の場合は嘔吐を繰り返している場合もあります。このとき水を無理やり飲ませると誤嚥の原因となることがあります。
犬が飲みたがる場合は積極的に与えても問題は無いのですが、水を欲しがらないときに無理やり与えるのはNGです。

熱中症の予防法は?

それでは熱中症にそもそもならないようにするにはどのようにすればいいのでしょうか。

熱中症へのかかりやすさを知る

熱中症はどんな犬でも、また子犬から老齢犬まで等しく発症する可能性のある病気です。しかしその中でも熱中症になりやすかったり、熱中症が悪化しやすい犬はいます。犬がそのような素因を持っているか知っておくと対策が立てやすいでしょう。

熱中症になりやすい犬

  • 短頭種とよばれる品種
  • 呼吸器疾患を持っている犬
  • 肥満

短頭種は、下記のような犬種を指します。鼻(マズル)が極端に短く、顔が平べったいという特徴があります。

  • ブルドッグ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • パグ
  • ボストンテリア
  • ペキニーズ
  • ボクサー
  • チワワ  など

これらの犬種は生まれつき呼吸器に何らかの疾患を抱えている犬が多いです。呼吸器に疾患があると、パンティングを上手く行えないため体から熱を逃がすことが出来ません。
短頭種でなくても気管虚脱や気管支軟化症など、その他の呼吸器疾患を持っている犬は同様にパンティングによって体温を逃すことができません。
また太り過ぎにも注意が必要です。肥満傾向も呼吸器への負担が大きくなるため、熱中症にかかりやすくなります。

空調の効いた室内で過ごす

気温が上がってきたらなるべく外にいる時間を減らし室内で過ごすようにしましょう。
またお留守番中に室内で熱中症になるというパターンも実は多いです。
空調の設定については、特に飼い主さんが留守にするときは人が少し肌寒いと感じるくらいに設定しておくと安心です。

散歩中にできること

散歩に行くタイミングと場所はとても重要です。
特に住宅街を散歩する場合はアスファルトを歩く事が多いと思います。
真夏のアスファルトは50〜60℃まで熱せられるとも言われています。犬は人よりも地面との距離が近いため地面からの熱を受けやすいです。そのため暑い時間に散歩にいくことも熱中症の原因の一つになります。
散歩は昼間ではなく日没後の涼しい時間帯に行いましょう。気温でいうと15〜21℃が目安です。出かける前に地面を触って、飼い主さんが5秒間触っても熱いと感じないくらい地面が冷えていれば散歩に適しています。
またアスファルトに比べると芝生や原っぱの方が表面の温度は上がりにくいため、公園等で運動させるようにするとなお良いでしょう。
ただし、激しい運動や、長時間の運動は控えるようにしてください。

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まとめ

犬の熱中症は、重症化すると命を落とす可能性もあります。犬と夏も快適に過ごすためにも熱中症の対策を行いましょう。もし犬が熱中症になったら、まずは慌てずに犬の体を冷やす応急処置をし、至急動物病院に連れて行きましょう。熱中症は、犬の異変に早く気付くこと、そして早く対処を行うことが大切です。
参考

  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。