犬の腎臓病について

犬の重要な病気の1つに腎臓病があります。どのような病気なのでしょうか?

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腎臓の働きと腎臓病

腎臓は尿を作る臓器です。代謝によって生まれた老廃物は血液に入り腎臓に送られます。
腎臓は血液から尿を作り排泄する過程で老廃物を身体から出してくれます。また、尿を作る過程で体のミネラルバランスを調節しています。
血圧が低下した際は血圧を調節したり、貧血の際は赤血球を作らせたり、骨を強くするなどの働きもあります。腎臓のこれらの働きが上手く出来なくなる病気が腎臓病です。

腎臓病には急性腎臓病と慢性腎臓病の2つがあります。
急性腎臓病は、代表的な救急疾患の一つです。急激に腎臓が壊れることで腎蔵の働きが低下し、死にいたることもありますが、適切な治療を行うことにより腎機能が回復する可能性もあります。
慢性腎臓病は、急性腎臓病によって低下した腎臓の働きが100%元に戻らないとき、または腎臓が数か月から数年かけて徐々に機能低下を起こしていく病気です。初期のころは、ほとんど症状が出ないことが多いです。しかし、悪くなってしまった腎臓は残念ながら元に戻ることはありません。

症状

急性腎臓病では以下の症状が急激に現れます。

  • 元気・食欲がなくなる
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 意識がない、または反応が弱くなる
  • 尿が少ない、または全く出ない

これらの症状は数日から長くて3週間ほど続きます。
若い犬では腎臓がある程度成長することが出来るため、失った腎臓の働きをある程度は補える場合があります。しかし、あまりにも腎臓へのダメージが大きい場合や、老齢犬の場合は完全には腎臓の働きが戻らない場合があります。

慢性腎臓病では病気の進行度によって以下の症状が現れます。
初期は目立った症状はほとんどありません(血液検査や尿検査で若干の異常が認められることはあります)
進行してくると徐々に以下の症状が認められるようになります。

  • 体重減少
  • 元気・食欲低下
  • 貧血
  • 水をたくさん飲む
  • 色の薄い尿をたくさんする
  • 嘔吐

この中でも、水をたくさん飲む、色が薄い尿をたくさんする(多飲多尿)といった症状は飼い主さんが最初に気づきやすい症状であるため特に注意しましょう。

更に進行すると以下の症状が認められるようになり腎不全の末期に向かっていきます。

  • 意識がはっきりしなくなる
  • 痙攣発作が起こる
  • やせ細る
  • 食欲が完全になくなる
  • 重度の脱水と貧血
  • 尿が出なくなる

慢性腎臓病の症状は腎臓の50〜75%が壊されないと現れないことも多いため、気づくのが遅れることもしばしばあります。

急性腎臓病の原因

急性腎臓病は以下の原因によって起こります。

腎臓に血流が上手く送られない

手術や怪我による重度の出血・脱水・血栓が腎臓につながる動脈に詰まること・心不全等、腎臓に十分な血液が送れなくなることで急性腎臓病が起きる場合があります。

尿が排出できない

尿管結石や腫瘍等によって尿道が閉塞すると起こることがあります。

中毒

腎臓を破壊する薬剤や食物を誤って食べてしまうことで起こる事が多いです。
ユリ、ぶどう、またはエチレングリコール(犬にとって甘みを感じる物質であるため誤ってなめてしまうことが多いです。車のエンジンの冷却水に入ってる不凍剤に含まれます)という物質などが有名です。

その他

免疫が過剰に働いてしまう病気や重篤な感染症(レプトスピラ症)などが原因となることがあります。特にレプトスピラ症は水辺での感染が報告されているため、川辺に行った際や水たまりに入ったあとに犬の調子が悪くなった場合は注意が必要でしょう。

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病は以下の原因で起こると言われています。また、高齢になればなるほど発生率は高くなります。

泌尿器系の炎症

糸球体腎炎や腎盂腎炎などの炎症が原因で少しずつ腎臓にダメージが溜まっていくことで発症します。

尿が排出できない

尿管結石や腫瘍等によって尿道が閉塞すると起こることがあります。

高血圧症

高血圧も腎臓に負担をかけて腎臓病の原因となります。

治療法

腎臓病では腎臓の機能が回復するまで、壊された腎臓が行っていた働きを代わりに行うことが必要になります。また腎臓がこれ以上壊れないように腎臓の負担を減らす治療を行います。

点滴

極度の脱水や、ミネラルバランスが崩れている状態であれば、点滴によって補充する必要があります。

透析

体の老廃物を人工的に外に出して血液をきれいにして戻すという治療です。効果的な治療ですが専門の設備が必要で、出来る施設は限られています。

投薬や食事療法

特に慢性腎臓病の場合は治すことが難しいため、病状の進行をできるだけ遅らせる治療を行います。
腎臓の保護や血圧を下げるための薬を与えたり、タンパク質や塩分を抑えた腎臓に負担が少ない食事を与えたりします。

予防法

膀胱炎や結石症が長引くことで起こる場合があります。膀胱炎や結石症になるべく早く気がつくためにも、日頃から排尿時に尿の色や量を確認しておきましょう。また、中毒をおこすような物質を誤食しないように見てあげましょう。

慢性腎臓病は高齢になると発症しやすくなるため、シニア期からは特に定期的な健康診断を心がけできるだけ早く異変に気づけるようにしましょう。

腎臓病は発見が難しい病気です

一般的には腎臓の2/3以上が壊れないと腎臓病の症状や特徴的な検査結果は認められない事が多いとされています。そのため病気が進行してから見つかる場合が多く、予防が難しい病気です。

まとめ

腎臓病、特に慢性腎臓病は1度なってしまうとずっと付き合いながら生活していかなくてはならない病気です。早い段階での治療開始が望ましいため、普段から犬の尿量や飲水量を確認したり、定期的な健康診断を受けたりするようにしましょう。

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  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。