愛犬の皮膚トラブル「脂漏症(しろうしょう)」の原因と自宅ケアのポイント

愛犬の体から、なんだか油っぽい臭いがする。皮膚を触るとベタベタしている、あるいはフケが大量に出てカサカサしている…。これらの症状は、犬の皮膚病の一つである「脂漏症(しろうしょう)」のサインかもしれません。
脂漏症は、見た目の問題だけでなく、かゆみや炎症、さらには重度の皮膚感染症を引き起こすことがあります。しかし、正しい知識を持ち、適切なケアを行うことで、症状を大幅に改善し、愛犬のQOL(生活の質)を向上させることが可能です。
本記事では、脂漏症のメカニズムから具体的な症状、そして飼い主さんが自宅でできるタイプ別のシャンプー・保湿ケアのポイントまでを詳しく解説します。
1. はじめに:「皮膚のベタつき」や「強い体臭」は病気のサインかも
犬の皮膚トラブルで飼い主さんが動物病院を訪れる理由として、「体臭が気になる」「フケが異常に多い」「皮膚が赤くベタベタする」といった症状は非常に多いです。これらは多くの場合、皮膚のバリア機能が低下し、皮脂の代謝が異常をきたしている脂漏症が関わっています。
脂漏症を単なる体臭の問題として放置すると、二次的な感染症(細菌やマラセチア)を引き起こし、治療が長期化する可能性があります。早期に原因を特定し、日々のケアを見直すことが重要です。
2. 犬の脂漏症(しろうしょう)とは?—皮脂の異常分泌が原因の皮膚病
2-1. 脂漏症のメカニズム:なぜ皮脂が過剰になるのか
脂漏症は、皮膚の最も外側にある「表皮」の細胞(角化細胞)の代謝サイクルが早くなりすぎたり、皮脂腺からの皮脂の分泌量が異常に増えたりすることで発症します。
通常、犬の表皮は約3週間かけて新しい細胞に入れ替わりますが、脂漏症になるとこのサイクルが異常に短縮されます。その結果、未熟なままの角質細胞がフケとして剥がれ落ち、大量の皮脂が分泌されることで、皮膚表面にフケと皮脂が混ざった異常な層が形成されます。
この異常な環境は、皮膚に常在するマラセチアや細菌の格好の餌場となり、それらが過剰に増殖することで、さらなる炎症、強いかゆみ、そして特有の脂っぽい強い体臭が発生するのです。
2-2. 【種類】乾燥性(カサカサ)と脂性(ベタベタ)の2つのタイプ
脂漏症の症状は、主に以下の2つのタイプに分けられます。多くの場合、これらが混在している「混合型」として見られます。
| タイプ | 特徴的な症状 |
|---|---|
| 脂性脂漏症 | 皮膚や被毛が油っぽくベタベタする、強い脂質の臭い、黄白色のフケ、赤み(紅斑) |
| 乾性脂漏症 | 皮膚が乾燥し、白いフケが大量に出る、被毛がパサつく、落屑(フケが落ちること)が多い |
3. 飼い主が気づくべき脂漏症の具体的な症状
脂漏症は犬の全身に発生しますが、特に皮脂腺が多く、湿度が高まりやすい部位で目立ちます。
3-1. 脂性脂漏症のサイン: 皮膚のベタつき、強い体臭、フケ、紅斑
- 皮膚のベタつき(脂性肌): 触ると皮脂でぬるぬる、ベタベタしており、被毛が束になってしまうこともあります。
- 強い体臭(脂っぽい臭い): 皮脂が酸化したり、マラセチアや細菌が繁殖したりすることで、独特のカビ臭いような、酸っぱいような強い臭いを発します。
- かゆみと赤み: ベタつきと同時に、皮膚が赤く炎症を起こし(紅斑)、愛犬が体を掻いたり舐めたりする行動が頻繁になります。
3-2. 乾性脂漏症のサイン: 大量のカサカサしたフケ、皮膚の乾燥と落屑
- 大量のフケ: 白く細かいフケが被毛の表面や愛犬が寝た場所に大量に落ちます。
- 皮膚の落屑: 皮膚の角質が剥がれ落ちる現象で、皮膚を触るとざらざらした感触があります。
- 被毛のパサつき: 皮脂が少ないため毛にツヤがなく、パサついた状態になります。
3-3. 特に症状が出やすい部位(耳、脇、股など)
脂漏症が特に重症化しやすいのは、皮膚が厚く、皮脂腺が多く、構造的に湿気がこもりやすい部位です。
- 耳の穴(外耳道): 慢性的な外耳炎を繰り返し、黒っぽい耳垢が大量に出ます。
- 脇の下や股の付け根: 皮膚が擦れ、赤み、ベタつき、体臭がひどくなります。
- 関節部(肘や足首): 皮膚が厚く硬くなり、象の皮膚のようになる(苔癬化)ことがあります。
- 背中や腰: 乾燥性のフケが目立ちやすい部位です。
4. 脂漏症の原因を突き止める—「二次性」がほとんどの理由
脂漏症の治療の成功は、単に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因(基礎疾患)を突き止めて治療することにかかっています。
4-1. 原発性(遺伝性)脂漏症: 特定の犬種に多く見られる
ごくまれに、遺伝的な体質により、他の病気がないにもかかわらず皮脂の代謝異常が起こるケースがあります。これを「原発性脂漏症」と呼びます。
- 好発犬種: コッカー・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティ)、ジャーマン・シェパード、ダックスフンドなど。
- 治療: 遺伝的な体質のため完治は難しいですが、薬と生涯にわたるスキンケアで管理が可能です。
4-2. 二次性(基礎疾患)脂漏症: 脂漏症を引き起こす根本的な原因
ほとんどの犬の脂漏症は、他の基礎疾患によって引き起こされる二次性のものです。これらの基礎疾患が治らない限り、脂漏症の症状は繰り返してしまいます。
主な基礎疾患
-
アレルギー性皮膚炎:
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎(環境アレルゲン)が最も一般的な原因です。アレルギーによる皮膚の炎症がバリア機能を破壊し、皮脂の過剰分泌やターンオーバーの異常を引き起こします。
-
内分泌疾患:
甲状腺機能低下症やクッシング症候群などのホルモン異常も、皮膚の代謝や皮脂腺の機能に影響を与え、脂漏症や被毛の異常を引き起こすことがあります。
-
皮膚感染症の合併症:
湿ったベタベタの環境は、マラセチア(真菌)や細菌が過剰に増殖しやすい状態です。これらの微生物自体が皮膚炎を悪化させ、かゆみや体臭、炎症をさらに強める悪循環を引き起こします。
5. 動物病院での診断と治療の基本
脂漏症の治療は、原因の特定と感染症のコントロールが中心です。
5-1. 診断プロセス:皮膚検査(細胞診、アレルギー検査など)
獣医師は、問診と視診に加え、以下の検査で原因を絞り込みます。
- 皮膚の細胞診: 皮膚の異常部位をセロハンテープや綿棒で採取し、顕微鏡でマラセチアや細菌がどれだけ増えているかを確認します。
- アレルギー検査: 食物アレルギーや環境アトピーが疑われる場合、除去食試験や血液によるアレルゲン検査を行います。
- 血液検査: 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が隠れていないか、全身の健康状態を確認します。
5-2. 薬物療法:基礎疾患の治療と炎症・かゆみのコントロール
- 感染症の治療: マラセチアや細菌が認められた場合、抗真菌薬や抗生物質のシャンプー、あるいは内服薬で感染を抑えます。
- 基礎疾患の治療: アレルギーであれば食事管理や免疫抑制剤、甲状腺機能低下症であればホルモン剤の投与など、根本的な原因治療を行います。
- かゆみ・炎症のコントロール: 症状がひどい場合は、ステロイドや免疫抑制剤などを短期間使用し、炎症のサイクルを断ち切ります。
6. 自宅でできる!タイプ別脂漏症のケアと再発予防
脂漏症の治療において、動物病院での投薬と同じくらい重要なのが、飼い主さんが自宅で継続するシャンプーと保湿のケアです。
6-1. 【脂性タイプ】シャンプー療法の極意: 適切な頻度と成分の選び方
脂性脂漏症の「治し方」の鍵は、過剰な皮脂とそれに伴って増殖した微生物を、皮膚に刺激を与えすぎないように取り除くことです。
シャンプーのポイント
- シャンプーの頻度: 症状が重い場合は、獣医師の指示のもと週に2~3回の頻度で薬用シャンプーを使用します。症状が落ち着いたら、頻度を減らします。
-
皮脂を取り除く成分:
- • サリチル酸: 皮脂の角化異常を改善し、過剰な皮脂とフケを取り除く作用があります。
- • マラセチア・細菌対策成分: クロルヘキシジン、ミコナゾールなど、感染症の原因菌に有効な成分を含んだ薬用シャンプーを選びます。
- ポイント: シャンプー剤を皮膚に浸透させるため、5-10分程度の適切な放置時間を守ることが重要です。
6-2. 【乾燥タイプ】保湿と栄養補給: 保湿剤の活用と、必須脂肪酸(オメガ3)の重要性
乾燥性脂漏症は、「犬 乾燥肌 対策」を徹底することが「治し方」につながります。乾燥した皮膚はバリア機能が弱いため、優しく水分と油分を補給します。
- セラミド・天然保湿因子: シャンプー後には、皮膚のバリア機能を助けるセラミドや天然保湿因子(NMF)を配合したローションやスプレーで、集中的に保湿を行います。
- 保湿系シャンプー: 刺激の少ないオートミールやアロエ成分を配合した、洗浄力がマイルドな保湿系シャンプーを使用します。
- 栄養補給(オメガ3): オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、皮膚の炎症を抑え、バリア機能を回復させる働きがあります。サプリメントや、オメガ3が豊富なフードを取り入れることも有効です。
6-3. 食事の見直し:皮膚の健康をサポートするフードの選び方
皮膚の健康は内側からのケアも大切です。
- 低アレルゲン食: アレルギーが原因の場合は、アレルゲンを排除した療法食または低アレルゲン食への切り替えが必須です。
- 必須脂肪酸のバランス: 脂質の質を重視し、炎症を抑えるオメガ3脂肪酸をバランス良く含む食事を選びます。
7. まとめ:慢性化させないための日々の観察と獣医師との連携
脂漏症は慢性化しやすい皮膚病ですが、原因を特定し、日常的なホームケアを徹底することで、愛犬の皮膚を健康な状態に保つことができます。
- 観察の習慣: 臭い、ベタつき、フケの量を毎日チェックし、変化があればすぐに記録しましょう。
- 諦めないケア: シャンプーや保湿は手間がかかりますが、継続が何よりの治療となります。
- 獣医師との連携: 症状が悪化したり、新しい症状が出たりした場合は、自己判断せず速やかに再診を受けましょう。
愛犬の皮膚を清潔で快適に保ち、皮膚の健康を守ることは、愛犬の全体的な幸福(QOL)に直結します。獣医師と協力し、根気強くケアを続けていきましょう。
8. 目に見えない「SOS」に気づくために
皮膚病から愛犬を守るためのアクションはたくさんあります。
ただ、何より重要なのは日々の小さな変化に気づいてあげることです。
「最近、夜間に咳が増えた気がする…」
「寝ているときの呼吸が少し速いような…」
そうした些細な変化は、健康状態悪化のサインかもしれません。しかし、毎日正確に数値を把握するのは非常に困難です。
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PetVoiceは単なる計測ツールではありません。愛犬の健康状態を客観的な数値で把握できることで、「何かあったらすぐに気づいてあげられる」という心の支えとなり、飼い主さんの不安を大きく和らげます。
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愛犬とのかけがえのない時間を、少しでも長く、健康に、そして穏やかに過ごせるように、飼い主さんができることから始めていきましょう。